親知らずがきれいに生えてこない理由
親知らずは、虫歯になったり炎症で腫れたりすると、抜歯をすすめられることの多い歯です。
ほかの歯なら治療して残すのに、なぜ親知らずだけは抜くことになるのかと、疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
理由は、親知らずの生え方にあります。親知らずの多くは、傾いて生えていたり、埋まっていたりと、きれいに生えておらず、治療自体が困難だからです。
では、なぜ親知らずはまっすぐに生えてこないのでしょうか?
今回は、親知らずがまっすぐきれいに生えてこない理由を、人類の進化をたどりながらお話しします。
親知らずがまっすぐ生えてこない理由は食生活の変化

親知らずがまっすぐ生えてこない原因は、顎の骨と歯の大きさのバランスが崩れたことによります。
これに大きく関係しているのが、食生活の変化です。ただし、食生活の変化と言っても、ここ数十年という話ではありません。
数百万年前から続く、長い時間をかけた変化です。人類が何をどのように食べてきたのかを、3つの時代に分けてみていきます。
400万〜100万年前
草食だった人類の祖先
それまでの人類は、現在のゴリラなどと同じように植物食だったと考えられています。
猿人の人骨を横からみると、顎は前方へ、そして下方へも大きく張り出しています。チンパンジーほどではないものの、現在の私たちとは比べものになりません。
顎が大きい分だけ顔も大きく、横顔の大きさは頭とほぼ同じくらいありました。硬い植物を噛み続けるには、それだけ大きな顎の骨が必要だったわけです。
肉食の始まり
猿人だった人類の祖先が、植物より栄養価の高い肉食を始めると、必要な食べ物の量は減っていきました。
そして噛み切りにくい食物繊維を摂る量も減ったため、食事にかける時間も噛む回数も少なくて済むようになります。
馬や牛などの草食動物は、ずっと口でモグモグと噛んでいますよね。一方、ライオンやトラなどの肉食動物は食べる時間が短く、昼間はゆっくり休んでいるのが特徴です。
肉食のほうが、食べるのにかかる時間も噛む回数も少ないのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
100万〜30万年前
火を使った調理方法の習得

この時代、人類の祖先は、猿人から原人に進化します。原人は、火を使って食べ物を調理しはじめました。
加熱した食べ物はやわらかくなり、弱い力でも噛みくだけるようになります。調理に使う道具も改良が重ねられ、食材を細かく加工できるようになりました。
こうして噛む回数も噛む時間も、猿人の時代よりさらに減っていくことになります。
3万年前〜現代
よりやわらかい物を食べるようになり、顎の骨もより小さく
30万〜3万年前までの旧人の時代には、食生活に大きな変化は見られません。再び変化が加速するのは、3万年前からの新人(現在の私たちと同じホモ・サピエンス)の時代です。
農耕や遊牧が始まり、食べ物の加工技術も一段と向上しました。やわらかく食べやすい食事が増えた反面、噛む回数も噛む時間もさらに減っていきます。
人骨をみると、口元の突き出した感じがかなり弱まっています。これは顎が現在の人類とほぼ同じ大きさにまで小さくなったためです。顎が小さくなるのに合わせて、顔全体も小さくなりました。
横顔の大きさは頭の半分ほどしかなく、噛む回数や噛む時間が減るとともに、顎の骨も縮んでいったことが読みとれます。
このような人類の歯の歴史について興味のある方は、医療連携施設である町田歯科の人の歯の変遷、そして未来のコラムも併せてご参照ください。
顎は小さくなったのに、歯の大きさは変わらないため、親知らずのスペースが足りない

顎の骨格は小さくなってきましたが、歯はどうでしょうか?
歯は人類に限らず、身体のなかで最も安定していて変化しにくい組織です。生物の骨の変化は数十万年単位で起こりますが、歯の変化には数百万年という年月が必要と考えられています。
人類は新人になってから数万年ほどしか経っていないので、顎の骨格の変化に歯が追いつけていません。
最も影響を受けるのが親知らず
そして、顎の骨格が小さくなる一方で、歯の大きさが変わらないので、顎の骨と歯の大きさのバランスに不調和が生じるようになりました。歯が並ぶ場所は狭くなったのに、並ぶ歯の本数も1本あたりの大きさもそのままだからです。
このしわ寄せを最も受けるのが、いちばん最後に生えてくる親知らずなのです。
イメージしてみるとお分かりになると思いますが、前から順に歯が並んでいくと、最後尾の歯となる親知らずに残されたスペースはわずかしかありません。まっすぐ立ち上がるだけのスペースがなければ、親知らずは斜めに傾いたり、骨や歯茎の中に埋まったまま止まったりします。
多くの親知らずがきれいに生えてこられないのは、この仕組みによるものと考えられています。
スペース不足の影響は1つ手前の奥歯にも

このように窮屈な生え方をしているのは、親知らずだけではありません。
こちらも医療連携施設である町田歯科の人の歯の変遷、そして未来のコラムでお話ししたように、近ごろは、親知らずの手前にある第二大臼歯(前から7番目の奥歯)が傾いていたり、埋まったままだったりするケースも見られるようになりました。
よりやわらかい食物を摂るようになった現代人の場合、スペース不足の影響が、親知らずの1本手前にまで及びはじめたようです。
このまま骨の縮小が進めば、6歳臼歯(第一大臼歯/前から6番目の奥歯)より後ろの歯は、虫歯や炎症を起こしたときに抜歯をする時代が来るのかもしれません。
親知らずの生え方が気になる方は歯科医院で確認を
今回は、親知らずがきれいに生えてこられなくなった理由についてお話ししました。
人類が草食から肉食に変わり、そして、よりやわらかい物を食べるようになった結果、現代人の顎は小さくなり、親知らずは傾いたり、埋まったりしたまま生えるようになってきています。
ただ、ご自身の親知らずがどの向きで、どのくらい深く埋まっているのかは、鏡で見ただけでは判断できません。レントゲン撮影をすれば、歯茎や骨に隠れた部分の向きまで確認できますので、親知らずが気になるときは、きちんと歯科医院で診てもらいましょう。
親知らずは抜歯した方がいい?それとも残した方がいいのコラムでもお伝えしたとおり、親知らずは抜歯となることが多くなりますが、生え方によっては残すこともあります。親知らずが痛む方だけでなく、親知らずの生え方に気になることがあるという方も、成増駅すぐそばの成増さくら歯科にぜひご相談ください。
