骨粗しょう症の薬で顎の骨が壊死する?知っておきたいMRONJ(薬剤関連顎骨壊死)とは
近年、骨を強くする薬剤が骨粗しょう症やそれによる骨折を予防するために広く使用されています。しかし、一部の薬剤により、顎の骨が壊死してしまうMRONJ(薬剤関連顎骨壊死)という病気が問題になっています。
骨を強くする薬で顎の骨が壊死するとは、一見すると矛盾しているように思えます。実際にはどういうことなのでしょうか。
そもそも顎骨壊死とはどういう状態?

骨の中には骨細胞という細胞があり、新陳代謝を繰り返しています。この細胞に栄養を届けるため、骨の中には毛細血管も走っています。
ところが、何らかの原因で顎の骨の血流が悪くなったり、骨細胞が死んでしまったりすると、そこから細菌感染が起こり、骨が少しずつ壊死していくことがあります。これが顎骨壊死です。
自覚症状としては、顎や歯茎の腫れ、排膿、慢性的な痛みがよく見られます。進行すると、壊死した骨が悪臭を放ち、変色し、分離してくることもあります。
顎骨が壊死する理由とは?

顎骨壊死が起きる理由はいくつかあります。たとえば頭頸部への放射線治療を行なったとき、放射線が顎骨にも照射されると、顎骨壊死が起きるリスクが上がります。
近年では、できるだけ顎骨に当てないよう医療技術が進歩しており、放射線治療による顎骨壊死のリスクは減りつつあります。
逆に、よく見られるようになったのが、今回のテーマである薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)です。MRONJとはMedication-Related Osteonecrosis of the Jawの略です。
特に長期間にわたって骨を強くする薬を使用している方に見られるようになりました。顎の骨は他の部位の骨よりも血流が盛んなため、薬剤の影響を受けやすいとされています。
さらに歯科手術である抜歯、インプラントなどの顎の外科的処置を受けた場合は、骨の修復が遅れるため、顎骨壊死リスクが高くなることがわかっています。
骨を強くする薬を使っている方が歯科治療を受ける際には注意が必要です。
MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)の原因となる薬とは?
原因となる薬には、主に以下のようなものがあります。
- ・ビスフォスフォネート系薬剤:骨粗しょう症の治療薬として広く使われている
- ・デノスマブ:骨粗しょう症やがんの骨転移の治療に使われる
- ・一部の抗がん剤(VEGF阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬など)
当初はビスフォスフォネート系薬剤だけが原因と考えられていましたが、現在では複数の薬剤がMRONJを引き起こす可能性があるとわかってきています。今後さらに新たな原因薬剤が判明することも考えられるでしょう。
MRONJの予防策について
MRONJは、歯科医師と連携することで予防できる可能性が高い病気です。予防のためのポイントは大きく2つあります。
①薬を使い始める前に歯科治療を済ませる

まず原因となる薬を使う前に、歯科医院で全体のチェックを受けましょう。歯石除去など歯のクリーニングはもちろんですが、虫歯やそれにともなう歯の周囲の炎症、膿瘍などがMRONJのリスクとなりますので、それらの治療を終わらせておきます。
歯科治療に時間がかかるほど、原因となる薬の使用開始が遅れます。こまめに通院し、早く歯科治療を終わらせることが大切です。
②薬の使用中も定期的に歯科医師のチェックを受ける
薬を使い始めた後も、定期的に歯科医院に通うことが重要です。これは、歯周病や虫歯の早期発見・早期治療だけでなく、MRONJを発症していないかを判断するためでもあります。
薬の服用中に歯科治療が必要になった場合はどうするか
もし原因となる薬を使用中、抜歯が必要となったり、 歯茎が化膿したりした場合は、早急に歯科医師に相談しましょう。
なお、原因となる薬剤を止めてもMRONJが治るわけではないため、自己判断で勝手に止めてはいけません。それどころか、薬を中止することで、大腿骨の骨折による寝たきりや、骨に転移したがん細胞が活性化するなど、大きなデメリットが多数潜んでいます。
命に関わるリスクが生じる恐れがあるため、必ず医師に相談してください。
MRONJについての詳細はまだ研究段階

症状についてさまざまなことがわかってきていますが、正確な発生率(何人にビスフォスフォネート系薬剤を投与し、何人が発症したか)や、原因となる薬剤の種類については、現在も研究している段階であり、今後判明してくる可能性があります。
また、MRONJになった場合の治療についても研究が続いていますが、確実性の高い治療法はまだ明らかになっていません。
お口の健康を守ることが全身の健康を守ることにつながります
骨粗鬆症治療、がんの骨転移で使用される薬剤による顎骨壊死を説明しました。お口は栄養をとる、会話をする、相手の印象を決めるなど、重要な部位です。これらの薬剤を使っている方は、日頃からお口のケアに取り組んでいくことが特に大切だと言えるでしょう。
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