シーシャがお口の環境に及ぼす影響
シーシャ(水タバコ)とは?
シーシャと聞いて、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか?
「リラックスしながら、カラフルなガラスの器具を囲んでふわりと香る煙を楽しむ」…そんな光景を思い浮かべる人も多いかもしれません。最近は、都心のカフェやシーシャバーなどで水タバコを気軽に楽しめる場所が増え、特に若者や観光客の間で人気が高まっています。
中東や南アジアが発祥

水タバコ(英語ではhookahやshishaと呼ばれます)は、もともと中東や南アジアの文化に根付いた喫煙方法です。見た目にも美しいガラス製の器具を使い、香りづけされたタバコの葉を炭で熱し、その煙を一度水に通してから吸い込む仕組みになっています。
アップル、ミント、バニラなどフレーバーが豊富で、タバコ独特のにおいや苦味が抑えられているため、「タバコが苦手な人でも吸いやすい」と言われることもあります。
SNS映えも人気を加速

また、見た目のエキゾチックさや、煙を吸って吐くという動作の「非日常感」も人気の理由の1つでしょう。SNS映えする器具や幻想的な煙の演出もあって、まるで新しいリラクゼーション文化のように見えるかもしれません。
しかし、この「おしゃれ」で「ゆるやか」に見える嗜好品の裏側に、大きなリスクが潜んでいます。「水を通すから有害物質が減る」「たまにしか吸わないから大丈夫」といった思い込みが、水タバコの危険性を過小評価させてしまっているのです。
今回は、シーシャ(水タバコ)の正体とその健康リスクについて、医師の立場からわかりやすく解説していきます。もしあなたや身近な人が水タバコに興味を持っているのなら、ぜひ一度立ち止まって、その本当の姿を知ってみてください。
シーシャと一酸化炭素中毒

水タバコに関連する健康リスクの中でも、特に見落とされがちなのが一酸化炭素(CO)中毒の危険性です。普段の生活ではあまり意識されることのないこの中毒症状が、水タバコの喫煙によって実際に起こり、救急搬送されることがあるという事実は、意外に知られていません。
水タバコは、タバコの葉を炭で加熱して煙を発生させる仕組みになっています。つまり、炭が燃焼する過程で発生する一酸化炭素(CO)も、吸い込む煙の中に含まれているのです。一酸化炭素は無色・無臭で、目にも鼻にも感じないため、自分が吸い込んでいるという実感がないまま、体内に蓄積されていきます。
換気の良くない場所でのシーシャは危険
特に、換気の悪い屋内空間で長時間水タバコを吸っている場合、体内に取り込まれる一酸化炭素の量が危険なレベルに達することがあります。実際に、世界各地の医療機関では、水タバコを吸った直後に頭痛・吐き気・倦怠感・めまいなどを訴えて救急搬送され、一酸化炭素中毒と診断されるケースが報告されています。
中毒症状は、軽度なら一時的な不快感ですが、重度になると意識障害、痙攣、最悪の場合は死に至る可能性もあるため、軽視できません。特に水タバコは、「気軽に長時間楽しむもの」という文化的背景もあり、自分が中毒になっていることに気づかずに喫煙を続けてしまうリスクがあります。
さらに、一酸化炭素は赤血球と強く結合し、酸素の運搬を妨げます。これにより、心臓や脳をはじめとする重要な臓器が酸欠状態に陥り、心筋梗塞や脳虚血などのリスクが高まります。これは若年者でも例外ではありません。
紙巻きタバコよりも多い一酸化炭素量
水タバコは、「煙を水に通すからマイルド」というイメージとは裏腹に、紙巻きタバコよりも多量の一酸化炭素を発生させ、それを吸うリスクがあるという、非常に危険な側面を持っています。
たとえ1回でも、また「一緒に吸っていただけ」という場面でも、一酸化炭素中毒のリスクは決してゼロではありません。「水タバコ=安全・おしゃれ」という誤解をなくし、正しい知識を持つことが、自分と周囲の命を守る第一歩です。
シーシャの口腔環境への影響

水タバコの煙は肺や心臓だけでなく、お口の中にも深刻なダメージを与えることがわかっています。香り付きでマイルドな印象から「歯や口にはあまり悪くないのでは?」と考える方も多いかもしれませんが、実際はその逆で、水タバコは口腔内の健康を脅かす大きな要因なのです。
歯周病の進行
まず、水タバコにはニコチンやタール、有害ガス(アンモニアや一酸化炭素など)が多く含まれており、それらが口腔内に直接触れることで、歯茎や粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。その結果、歯周病が進行しやすくなり、歯茎が腫れる・出血する・歯がぐらつくといった症状が現れることがあります。
歯の着色やお口の中の乾燥
タールなどの色素沈着によって、歯の表面が黄ばむ、着色しやすくなるといった美容面での影響も避けられません。見た目の印象を大きく左右する口元の清潔感が損なわれることは、大きなマイナスです。
そして、水タバコは吸っている時間が長く、器具の吸い口を口にくわえた状態が続くため、口腔内が乾燥しやすくなる(ドライマウス)という問題もあります。唾液には殺菌や自浄の作用がありますが、それが減ることで、虫歯や口臭、感染症のリスクが高まります。
より重篤な疾病も
何より深刻なのが、口腔がんや咽頭がん(のどのがん)との関連です。水タバコの煙には発がん性物質が含まれており、口の中やのどの粘膜に長期間さらされることで、細胞の異常な変化(前がん病変やがん化)を引き起こす可能性があります。特に、定期的に水タバコを楽しむ習慣がある人は、知らないうちにリスクを積み重ねていることになります。
また、水タバコは複数人で吸うことも多く、吸い口を共有することから、ヘルペスウイルスやC型肝炎ウイルス、口腔内の細菌感染症などが他人からうつる危険性もあります。衛生面のリスクにも十分な注意が必要です。
おしゃれに見えるシーシャの危険性をきちんと理解して

「たまに吸うだけだから大丈夫」と思っていても、口腔内は体の中でも特に煙の影響をダイレクトに受けやすい部位です。
歯科医や口腔外科の医師の立場から言うならば、水タバコの習慣は将来的に口腔の健康を大きく損なう可能性があるものです。見た目はおしゃれでも、その代償として口の中で静かに進むダメージにも、きちんと目を向けていただければ幸いです。
