2025.11.27

噛むことは本当に脳に良いのか?脳科学的に検証

『よく噛むことは、脳に良い』と聞いたことありませんか?

以前から、歯科では良く噛むことが脳機能に良い影響を与えると言われてきました。

実は、このテーマを脳科学の面から明らかにしようとした研究があります。今回は、噛むことが脳に本当に良いのか、これらの研究を交えつつ、お話ししたいと思います。

脳機能の調べ方

脳機能の調べ方~脳波の測定

噛むことがどのように脳に働いているのかを調べる方法は、いくつかありますが、よく行われているのが脳波の測定です。

脳波とは?

脳が働くとき、脳の神経細胞のネットワークから電気信号が出ます。とても弱い電気信号ですが、これをキャッチして波形として表したものが、脳波です。

私たちの脳の働きはとても複雑なので、さまざまな脳波が検出されています。

事象関連電位

私たちの脳は、何らかの刺激を受けるとそれが引き金になってある脳波を出します。これを事象関連電位(じしょうかんれんでんい)と呼んでいます。

事象関連電位にもさまざまなタイプがあり、噛むことが脳にどのように働いているのかを調べるために用いられたのは、P300という脳波です。

P300とは、なんらかの刺激を受けてから0.3秒(300ミリ秒)後に発生する陽性(Positive)反応のことです。脳が活性化すると反応にかかる時間が短くなり、認知症やアルツハイマー病になると長くなるのが特徴です。

噛むことと脳の関係の研究

噛むことと脳の関係の研究

噛むことが脳の働きにどのように影響するのか。この研究は自然科学研究機構(NINS:: National Institutes of Natural Sciences)生理学研究所(NIPS:National Institute for Physiological Sciences)で行われました。

柿木隆介教授と坂本貴和子研究員による研究成果は、国際臨床神経生理学会雑誌のオンライン版に掲載されています。以下でその概略を分かりやすく説明しましょう。

研究内容

この研究は、健常者の方を対象に行われました。

  1. ①5分間、味や香りのないガムを噛んでもらう
  2. ②何もせずに5分間過ごしてもらう
  3. ③ガムを噛まず、5分間、顎だけ動かしてもらう
  4. ④5分間、指先だけ動かしてもらう

このように4つのパターンの動作を行い、その後に音を聞かせてP300の発生時間を測って比べるというものです。

ガムを噛むほどに脳が活性化

5分間ガムを噛んだ後では、P300の発生時間が早くなりました。しかも、繰り返せば繰り返すほど、その効果は明確になっていったのです。

一方、何もしていない場合や、顎だけ動かした場合、指先だけ動かした場合のいずれもP300の発生時間に差は見られませんでした。さらに、繰り返すほどにP300の発生時間は遅くなっていったそうです。

つまり、何かを『噛む』という行為が、脳を刺激し、脳の認知力を高めたと考えられます。

より詳しくは、前出の生理学研究所の「噛めば噛むほど、脳は活発に— モノを噛むことに効果あり。脳波を使った研究で証明 —」をご参照ください。

入れ歯を使って噛むことでも脳は活性化される

入れ歯を使って噛むことでも脳は活性化される

「噛む」ことの大切さがわかっても、歯がない方は諦めるほかないのでしょうか?実はそんなことはありません。

入れ歯を使って噛むことにより、脳が活性化されるかどうかを検証した研究もあります。

入れ歯を使う方を対象にした研究

日本大学で、歯がない方が入れ歯を使うと、脳の認知機能がどう変化するのかを調べた研究が行われました。

こちらは、入れ歯を新しく作る方を対象としたものなので、平均年齢も70歳と高めです。高齢の方ばかりですが、脳の病気がない方を抽出して検証されました。

入れ歯を使用した結果は?

入れ歯をつけた直後と、入れ歯を入れてから1ヶ月、3ヶ月でP300を比べてみると、入れ歯を入れてから1ヶ月後にP300の発現反応が強くなっていました。

このことから、入れ歯が脳の認知機能の向上に役立っていると考えられます。

噛むと脳が活性化する理由

噛むと脳が活性化する理由

食べることによる脳神経の刺激

食べ物を噛む、すなわち食べるとき、わたしたちは食べ物を、目で見て、耳できき、鼻で香りを嗅ぎ、口で味を味わいます。
そして、お口を開け閉めする筋肉、食べ物を飲み込むための舌や喉、首周りの筋肉が働きます。

食べるという行為には、さまざまな感覚刺激があるうえ、筋肉を動かすことによる刺激もあり、これらが脳に伝わることで、脳の働きを活性化していると考えられています。

血流の増加

しっかり噛むと、脳へ栄養や酸素を届けている動脈の血流が増加します。これは、脳波ではわかりませんが、fMRIという画像診断を行えば見えてきます。

脳神経を刺激する効果と脳の血液量が増える効果で、脳の認知機能が活性化されるようです。

まとめ

今回は、『噛む』という行為が脳にとって良い刺激になるのかを、脳科学の研究をご紹介しつつお伝えしました。お話ししてきたように、噛むと本当に脳の認知機能が高まることは真実です。

今回の研究で明らかになったのは、認知機能に限られたものであり、よく噛めば頭の回転が良くなるとか、記憶力が上がるかといったことまでは判明しませんが、しっかりと噛むことが脳にとって大切であることはご理解いただけたかと思います。

しっかり噛めることは、健康な歯と正しい噛み合わせがあってこそ実現するものです。成増さくら歯科では、患者さん一人ひとりのお口の健康を保てるよう、真摯にサポートいたしますので、歯や噛み合わせの状態でお困りの方は、成増駅すぐそばの成増さくら歯科へ、お気軽にお問い合わせください。

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