歯を失う原因と、その防ぎ方
皆さんは、ご自身の歯がどれくらい持つかご存知でしょうか? 厚生労働省の調査によりますと、最も長持ちする歯(犬歯)で65年、最も短い歯(下顎の奥歯)で50年でなくなるそうです。
永久歯が生える年齢を考えると、60歳ごろに寿命を迎える歯が出てくることになります。 では、歯を失う原因は、いったい何なのでしょうか?それを明らかにすると、歯をより長持ちさせることにつながるかもしれません。 今回は、そんな歯を失う原因についてお話ししようと思います。
歯を失う原因
歯を失う原因については、厚生労働省や8020財団などによる調査結果が参考になります。 興味のある方は、併せてご参照ください。
歯を失う原因 1位:歯周病
歯を失う原因の第1位は歯周病で、約40%です。歯の病気というと虫歯を想起する方が多いのですが、ギネスブックで世界で最も感染者が多いとされている病が歯周病であり、日本人成人の約8割は歯周病ともいわれています。
歯周病とは、歯肉や歯の周りの骨(歯槽骨:しそうこつ)など歯を支える役割を果たしている歯周組織に生じる病気の総称のことを指します。
歯周病になると、歯肉炎という歯肉の腫れや出血などの炎症から始まり、歯を支える歯槽骨に炎症が拡大する歯周炎に発展します。 歯周炎が悪化すると、歯槽骨が徐々に減少していくので、やがて歯が動き始め、最終的には歯が抜けてしまいます。
歯を失う原因 2位:虫歯
歯を失う原因の第2位は虫歯で、約30%です。 虫歯も歯周病に匹敵するほど感染者数の多い感染症です。
虫歯は、ストレプトコッカス・ミュータンスなどの菌が作り出す酸によって歯が溶かされる病気です。初めは、エナメル質という歯の外側が溶かされる症状から始まり、やがて、溶かされる範囲が内部の象牙質にまで広がってしまいます。
悪化すると、歯の歯肉より上に出ている歯冠(しかん)部分がなくなり、歯肉より下までに虫歯が進むと、その歯はもう抜歯せざるを得なくなります。
歯を失う原因 3位:歯の破折(はせつ)
歯を失う原因の第3位は歯の破折で、約20%です。 歯の破折とは、転倒や事故、打撲などにより歯が欠けてしまうことです。
先ほども出てきましたが、歯は、歯肉より上を歯冠(しかん)といい、歯肉より下の部分を歯根(しこん)といいます。
歯の破折で問題となるのは、歯のどの部分がどのように破折したかです。 歯冠部分が破折しただけなら、その歯は残すことができます。しかし、歯根部分が破折したなら、ほとんどの場合抜歯になります。
残念ながら、破折した歯根を接合する方法はないからです。 破折した歯根を残して、上にブリッジや入れ歯を入れることもできないので、次の治療を行うために抜歯せざるを得ないのです。
歯を守る方法は?
歯を失う原因の第1位から第3位までで90%を占めますが、歯周病と虫歯だけでも約70%になることが分かります。この歯周病や虫歯については、適切な予防対策がありますので、しっかりとそれを守ることで、歯を失うリスクを低くすることができるでしょう。
プラークコントロール
歯周病も虫歯も、その原因は細菌であり、これらの細菌は歯の表面についているプラーク(歯垢)の中にいます。このプラークをきちんと除去できれば、歯周病や虫歯になるリスクを抑えることができるわけです。
プラークを取り除くことをプラークコントロールといいますが、正しいプラークコントロールを行うことが、歯周病と虫歯予防のための基本になります。
セルフケアによるプラークコントロール
セルフケアは、ご自身で行っていただくプラークコントロールであり、毎日のきちんとした歯磨きのことを指します。
ただ、プラークコントロールをしっかり行うためには歯ブラシで磨くだけでは足りません。 歯間ブラシやデンタルフロスなどを使って、歯と歯の間まできれいにするようにしてください。
歯間ブラシやデンタルフロスの活用について詳しく知りたい方は、提携医療機関である町田歯科の使っていますか?デンタルフロスや歯間ブラシやデンタルフロスはどう使う?のコラムをご参考になさってください。
プロフェッショナルケアによるプラークコントロール
プロフェッショナルケアは、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が行うプラークコントロールです。
プラークの温床となるのが歯石という歯にこびりついている石のような硬いものです。 この歯石は歯ブラシでは取ることができず、歯科医院でのスケーラーによる除去が必要です。
また、いくら丁寧に歯磨きしても、磨き残しは生じるものです。そこで、ご自身では磨けていない箇所を、専用機材によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)によってきれいにします。
このほか、必要に応じて、正しい歯磨き方法の指導(TBI:Tooth Brushing Instruction)をすることもあります。
PMTCやTBIについては、予防歯科のページで解説しておりますので、併せてご参照ください。
フッ素の活用
虫歯予防にはフッ化物、いわゆるフッ素も効果的です。 フッ化物には、虫歯菌の活動を抑えたり、歯を強くしたり、溶かされた歯を修復したりなど、虫歯を防ぐ効果があります。
フッ素の活用法としては、「フッ化物入りの歯磨き粉で歯を磨く」「フッ化物入り洗口液でうがいをする」「歯科医院で歯にフッ化物を塗布してもらう」などがあります。フッ素を上手に使って虫歯を防ぎましょう。
フッ素(フッ化物)についてより詳しく知りたい方は、同じく提携医療機関である町田歯科のフッ化物(フッ素)の歴史のコラムをご覧ください。
マウスピースの使用
マウスピースは、歯につける樹脂製のカバーです。 転倒や事故など予期しないケガで歯が破折するのを防ぐことはできませんが、スポーツのケガならそうではありません。 スポーツをする際に専用のマウスピース(マウスガード)をつけておくことで、歯を破折から守ることができます。
また、歯ぎしりや食いしばりなどの噛み合わせの癖がある方は、歯の破折を引き起こすだけでなく、歯周病を悪化させることもあります。そのような方にもマウスピース(ナイトガード)はおすすめです。
市販のマウスピースもありますが、汎用品のため、歯へのフィット感はそれほど高くありません。ご自身にぴったりのマウスピースが欲しいという方は、歯科医院で歯型を取ってオーダーメイドのマウスピースを作ってもらうのが良いでしょう。
各種マウスピースの詳細については、提携医療機関である町田歯科の以下のコラムをご参考になさってください。
・スポーツ用マウスピース(マウスガード)の効果
・寝ている時の歯を守るマウスピース(ナイトガード)
まとめ
今回は、歯を失う原因と、その予防法についてお話ししました。 歯を失う原因の大半は歯周病と虫歯です。しっかりと歯周病と虫歯を予防すれば、歯を失う原因の3分の2が防げることになります。
いつまでもご自身の歯で噛めるよう、当院では予防歯科による歯のクリーニングやメンテナンス、プラークコントロールを重視しておりますので、たしかな歯周病予防・虫歯予防に取り組みたいとお考えの方は、成増駅すぐそばの成増さくら歯科にぜひお越しください。